『論理的思考力を鍛える33の思考実験』 北村良子著
最近、物事を長く考える機会が減ってきたように思います。
分からないことはすぐにググれば出てきますし、
忘れないようにスマホのリマインダーで音を鳴らす。
ブログは少し長めに書くようにはしていますが、
Twitterなど、短文が中心になっている。
そんなわけで「論理的思考力」とやらを鍛えてみようと読んでみました。
「思考実験」とは
「思考実験」とは何か?から。本書では以下のように定義されています。
ある特定の条件の下で考えを深め、頭の中で推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していく、思考による実験です。
実験室はあなたの頭の中、実験道具はあなたの倫理観や今まで積み上げてきた知識や論理的思考力、集中力や想像力といったところでしょうか。
(「はじめに」より)
暴走トロッコと作業員
有名な例を挙げると、「暴走トロッコと作業員」がありますね。
権利関係もありますので、イラストを描きました。
【条件】
あなたは、トロッコの切替スイッチのところにいます。
今、暴走するトロッコが突っ込んでくるのがあなたにだけ見えています。
このままでは「5人」の作業員に突っ込み、5人は死んでしまいます。
(大声など、彼らに知らせることはできません)
しかし、スイッチを切り替えると、「1人」の作業員のルートへ切り替わります。
もちろん「1人」は死んでしまいますが「5人」は助かります。
あなたはスイッチを切り替えますか?
自分だったら確実に切り替えないでしょうね。
本書でも解説がありましたが、多くの人は切り替えないと思います。
人の生き死にという重要な局面を自分が関与したくないということ。
加えて、積極的義務より消極的義務の方が優先されるということ。
積極的義務とは、助けを求める人を助けること。
消極的義務とは、人に危害を加えないようにすること。
前者は「他人にどんどんやさしくしよう」といったものですが、
後者は「最低限、人に迷惑かけないように」という感じですね。
普段どちらを主に社会生活をしているかというと、「消極的義務」でしょう。
結果として、スイッチを切り替えない=消極的義務の方が優先されるのです。
ただ、「1人」の方が気に食わない人だったら、切り替えない自信はありませんけど。
モンティホール問題・変えたかったら変えてもいいよ
これが何回か読んでもまだイマイチ納得できていない問題。
内容は有名なのでご存知の方も多いと思います。
【条件】
A、B、Cのドアがあり、1つがアタリです。
あなたが、一つのドアを先に選びます。
次に司会者が、残る2つのドアのうちハズレの1つを開けます。
ここで司会者から「あなたが選んだドアと残る1つのドア。変えてもいいですよ」と言います。
変えた方が当たる確率は高いでしょうか?
こんな問題です。
結論から言うと、「変えた方が良い」そうです。
【解説】
①「Aのドアが当たる」
②「BかCのドアのうち、どちらかが当たる」
の二択だとすると、②の方が確率が高いですよね。
①は1/3、②は2/3です。
最初にAを選んだ後、BかCのうちの1つがハズレと分かった上で変更するということは、正にこの②を選んだのと同じことという説明です。
これは何となく納得いきましたが、その追加説明がうまく理解できませんでした。
「変えない」と「変える」場合について、それぞれ全パターンを書いたものです。
エクセルで作りましたので見づらいかもしれません…
【本書解説によるパターン】
左側の変えないパターンは、黄色と★が一致しているのがアタリ
右側の変えるパターンは、オレンジと★が一致しているのがアタリ
こうやってみると、
「変えないパターン」は3/9つまり1/3の確率でアタリ
「変えるパターン」は6/9つまり2/3の確率でアタリ
⇒「変えた方が当たる確率は高い」となります。
ただ、「全パターン」だとすると、「BかCを開ける」というあいまいな選択が混在しているのが気にかかりました。
もしこれを分解すると、12パターンとなって、確率は同じではないでしょうか?
【私の解釈】※まだ考え中ですが
こうすると、どちらも6/12、つまり変えても変えなくても確率は同じということになります。
考え方が間違っているのでしょうが、納得まで至っておりません。
分かりやすい解説ができる方が居れば、教えてください…
ちなみに、モンティホールとはバラエティ番組の司会者の名前で、
彼が司会を務める番組のゲームの一つがこれだったそうです。
その他も有名どころもあり
その他の有名どころの思考実験としては、
・5億年ボタン
なども収録されています。
もちろん、知らなかった思考実験もいくつか掲載されていました。
また、昔から私が考えていた、
・人混みは何人から人混みと言えるのか
(100人は人混み⇒99人はまだ人混み⇒では何人減ったら?的な)
・砂場は何粒から砂場なのか
といったことにも触れられていました(「テセウスの船」問題)。
悩むことを楽しむ
結局、この手の本は悩むことを楽しめるかどうかにあると思います。
実際にトロッコで人が死ぬ場面に出くわすことは多分ないですし、
知らない5人と1人のどちらを選ぶかに正解はないでしょう。
何か騙されているようで納得のいかない問題は、まだ他にもありますが、
何度か読み返して腑に落としたいと思います。